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「それじゃあ、朱音さんが噂の編入生だったんですか」
「だから、さん付けじゃなくてもいいって。私はミリアって呼び捨てにしてるんだからさ。図々しくも……」
鳥篭のベンチに二人で腰掛けながら、朱音とミリアと言う少女は話込む。
あの後、お互いの自己紹介を済ませて、二人はすっかり意気同行していた。
その日の夜、朱音は慣れない部屋のせいで中々寝付けないでいた。ピンク色のレースが入った布団に潜り、薄暗い自分の部屋を見つめる。一人部屋の割には広く手入も行き届いている。備え付けの家具であるクローゼットや本棚には、自宅から送られてきた衣服や書物などが収められていて、シンプルかつ上品な装飾が付いた家具に囲まれた部屋の作りに、朱音は落ち着かないというよりも、居心地の悪さを感じていた。
どうも朱音は、この上品で清楚な女の子の部屋の雰囲気が苦手らしい。出てきた家の自分の部屋はシンプルだったが、レースのカーテンやピンクの布団など、自分の性格から言って絶対にありえなかった。
ここは、アスガルドに通う学生が住まう寮が存在する島。この島には、主に三つの寮が存在する。幼稚舎から大学まであるこの学院には、一つの寮だけで生徒全員を住ませることは不可能。そのために、小等部と中等部、高等部と大学部、幼稚舎と分けられている。
「おお!!すっげぇ―――――!!」
朱音は寮を目の前にして叫ぶ。それもその筈、目の前には寮と称される、上品な造りをした屋敷が佇んでいたからだ。それに、寮などと言う言葉が似合わないほどの高貴なオーラが滲み出ている。
第一章 アスガルド
とある一室、黒塗りの大きなテーブルに向き合うように、一人の老人と少女が腰掛けていた。
「あなたも随分老けたわね」
少女は、無愛想にそう言うと、テーブルに置かれた紅茶のカップに手を伸ばした。その瞬間に、肩口から零れた銀髪が、さらりと胸元に落ちた。